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「レット・イット・ビー」 ~胸にしみる理由(2) [音楽の聴き方]

前回「レット・イット・ビー」の魅力は、
詞の世界観(テーマ)を、音楽が見事に体現している点にあると書いた。

では「救い」というテーマを、ビートルズはどのように料理しているのか。

■ゴスペル的要素

まず全体の印象として分かりやすいのは、ゴスペル的な味付けだ。

例えば、曲のブリッジやエンディングの、オルガンの下降フレーズや、
聖歌隊風のコーラスといった要素などから、
この曲をゴスペル・ソングと捉えるのは、それほど難しくない。

レイ・チャールズアレサ・フランクリンらの、ソウルフルなカヴァーを聴けば、
いっそう、そういった思いは強まるし、
もともとこの曲は、アレサのために書かれたという逸話もあるくらいだ。
ゴスペルもやはり「救い」の歌であることを考えれば、この味付けも納得がいく。

 

「Let It Be」Ray Charles

■安定した構成

それにしても、だ!

ここには粋なコードや凝った転調もなければ、刺激的なコーラスもない、
不規則な拍子や小節、リズムチェンジといった、
あっと驚くような仕掛け(ひねり)は皆無である。

ピアノは素人でも弾けそうなものだし、
TVを見ながらギターをいじっていたら、
無意識のうちに出来てしまったようなコード進行だ。

清々しいほどのシンプルさ!

このシンプルさは、これまでビートルズが行ってきた
音楽的実験の数々からすれば、むしろ異様に映る。
キャッチーでありながらも、実は凝ったことをしていたのが
ビートルズというグループだったのだから。

だからこの曲を面白くない、という人もいるかも知れない。
僕自身、大好きだったこの曲が、
いつしかそのヒネリのなさや、予定調和的なところに、
どうしても物足りなさを覚えて、つまらないと感じたこともあった。

でも今では、そこにこそ、この曲の極意があると思っている。

魂の救済を歌ったこの歌が、説得力を持つために、
むしろ、この曲は単純で予定調和的でなければならなかったのだ。

彼らの曲としては、初期のロックンロールのカバーなどを除いた曲で、
これほど単純な構成の曲も珍しいのではないだろうか。

コード進行のパターン

小節数
イントロ A 4
1番 A×2 4×2
1番サビ B 4
2番 A×2 4×2
2番サビ B×2 4×2
間奏 C 4
ギター・ソロ A×2 4×2
サビ B 4
3番 A×2 4×2
3番サビ B×2 4×2
アウトロ C' 2

 
表はシングル・バージョンの構成だが、
これを見ると、規則的で実にすっきりしてるのが分かる。
コード進行のパターンはA、B、Cの3パターンだけ。
そのいずれも4小節を基本単位としている(最後だけ2)。
この4というのが、とても自然で安定した数なのだ。

1コーラスは、A(Aメロ)とB(サビ)で構成されている。
表の水色とピンクで色分けされた部分は、構成はまったく一緒だから、
さらに単純化すれば、

イントロ | コーラス×2 | 間奏 | コーラス×2 | アウトロ

 
となる。

単純で、安定した構成の曲というのは、
宗教画の多くが、安定した構図であるのと同じように、
聴くものに安心感を与えてくれるだろう。

これが変拍子バリバリの、複雑な展開を持つ曲だとしたら、
とてもじゃないが穏やかでいられない。

この曲が単純で、愚直なまでに安定した構造なのは、
それがまさに救いの歌であるからであり、そこに安らぎや癒しを求めるからではないか。

■自然な流れのコード進行

構成も単純なら、コード進行も実に単純だ。

コード進行
A(Aメロ)  |C G |Am F |C  G |F C | 
B(サビ)  |Am Am/G |F C | C G |F C |

 
使われているコードは基本的に C、G、Am、F のたった4つ!
これも彼らにとっては珍しい。

これらのコードは、この曲のキーであるCのダイアトニック・コード、
つまりドレミファソラシドの組み合わせでできるコードで、とても相性がいい。

ダイアトニック・コード同士は、
転調することなく、スムーズにつなぐことができるので、
自然な流れを作り出すことができる。

この曲の、川が上流から下流へ流れるような予定調和的な美しさは、
このダイアトニック・コードによるところが大きい。

転調や凝った展開など、あれこれ複雑に考えるのではなく、
シンプルに流れのままに従ったコード進行。

それはまさに「流れに身を任せよ」という、この曲のメッセージと一致する。

 

「Let It Be」Carol Woods And Timothy T. Mitchum
 


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コメント 4

yukky_z

こんにちは~♪
おお、素晴らしい分析力ですね!ビートルズの曲って、
やっぱ楽譜上とかだけでは表せない、何かがあるんで
しょうね?! それを「ビートルズ・マジック」という言葉
だけで片付けてもいいものなのかって、いつも考えて
しまいます^^;
by yukky_z (2010-01-04 11:41) 

walrus

yukky_zさん
僕は専門家ではないので、
細かいところを突っ込まれると弱いんですが…
好きな曲については、もっとよく知りたいと思うし、
何で自分はこの曲が好きなんだろうってのはよく考えます。
by walrus (2010-01-05 01:10) 

DEBDYLAN

「LET IT BE」はゴスペルだと思います。
わかりやすいポールだから狙ってたんでしょう(笑)

よく言われてる事実ですが、
ポールが左利きだったコト。
だからピアノの低音が強調されて、
ソレがこの曲の荘厳な雰囲気を作り出してる要素にもなってるコト。

意図したモノと偶然がうまくマッチしたんじゃないかと^^。

ジョージのギター・ソロもいいですね!!
当時ポールにぼろくそ言われてたみたいですが。。。
(映画『LET IT BE』のジョージに難くせつけるポールは醜かった。。。)
シンプルながら印象的なフレーズを弾いてますね♪

by DEBDYLAN (2010-01-11 00:23) 

walrus

DEBDYLANさん

> だからピアノの低音が強調されて、
> ソレがこの曲の荘厳な雰囲気を作り出してる要素にもなってるコト。

なるほど!それは考えたことなかったです。
確かにそうですね。

映画「Let It Be」のシーンは、いたたまれない気持ちになりますね。ジョージも最後はヤケになってたような…



by walrus (2010-01-17 12:44) 

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