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『スリー・スネイクス・アンド・ワン・チャーム』ザ・ブラック・クロウズ ~新たな可能性~ [音楽の聴き方]

スリー・スネイクス・アンド・ワン・チャーム

Three Snakes And One Charm」The Black Crowes(1996)

 1. Under A Mountain
 2. Good Friday
 3. Nebakanezer
 4. One Mirror Too Many
 5. Blackberry
 6. Girl From A Pawnshop
 7. (Only) Halfway To Everywhere
 8. Bring On, Bring On
 9. How Much For Your Wings ?
10. Let Me Share The Ride
11. Better When You're Not Alone
12. Evil Eye
13. Just Say You're Sorry (Bonus Track)

プロデュースJack Joseph Puig & The Black Crowes

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■地味な序盤

これまで彼らのアルバムは、1曲目から刺激的なナンバーを、
ガツンとぶちかましてきたものだが、このアルバムはちょっと違う。

1曲目の「アンダー・マウンテン」は、ゆったりとした、けだるい曲調。
2曲目の「グッド・フライデイ」は、湿っぽいバラード。
3曲目の「ネバカネザー」も、もったりとした曲調。

うーん、悪くはないんだけど…

そんな感じで、初めて聴いたときは、
いまいち盛り上がれず、すっきりしない気持ちをかかえたまま、
気付いたら4曲目に突入していたという感じだった。

■行き場を失くしたカラス

『スリー・スネイクス・アンド・ワン・チャーム』は、
その手抜きのようにも見える、シンプルなジャケットに象徴されるように、
彼らの作品の中でも、もっとも捉えどころのないアルバムだ。

アルバムを出すたびに、確実に進化(深化)を遂げてきた
ブラック・クロウズであるが、彼らも人の子、いやカラスの子、
ここへ来て、さすがに失速か!?

いや、結論を出すのはまだ早い。

だいたい、考えて見て欲しい。
前作『アモリカ』で最深部に到達してしまった彼らにとって、
これ以上、いったいどこへ向かえばいいというのか?

それでも真のアーチストの性か、
前に進まなければ死んでしまう、とでもいうように、
必死で羽を動かす、彼らの健気な姿がここにある。

そんなジレンマの雲がアルバム全体をおおい、
行き場を失ったカラスたちの閉塞感を映し出すかのように、
今ひとつまとまりのない、散漫な印象となっているのも確かだ。

何となく気だるい雰囲気の曲が多い中、
一方で、パンチの効いたT-5「ブラックベリー」や、
スライっぽい、T-7「(オンリー)ハーフウェイ・トゥ・エヴリホエア」
ホーンセクションが印象的なT-10「レット・ミー・シェア・ユア・ライド」など、
ギンギンにヘヴィで、ファンキーな曲もあるにはある。
(コーラスでPファンクのメンバーが参加してもいる)

ただこのアルバムの中では、いまいち浮いてる感じがするのが惜しい。

■実は名曲ぞろい

それでも、個々の曲は決して悪くない。
いやそれどころか、半数は彼らのキャリアの中でも
上位にくるような名曲だと断言できる。

例えばT-4「ワン・ミラー・トゥー・メニイ」の開き直ったポップ感覚。
まるでロッド・ステュワートのいたジェフ・ベック・グループに、
インド・テイストをまぶしたような、極上のソウルフルなサイケデリックチューンだ。
荘厳な読経的コーラスで、広がりをみせるサビは圧巻。完璧な1曲。

T-6「ガール・フロム・ア・ポーンショップ」は、
ザ・バンド
のバラードのような、緊密な静けさに始まり、
サビではポール・ロジャースのようなソウルフルなシャウトを聴かせ、
最後はゴスペル風コーラスで盛り上がるという、ドラマティックな展開の曲。

アコースティックな曲はこれまでもあったが、
T-8「ブリング・オン、ブリング・オン」
T-9「ハウ・マッチ・フォー・ユア・ウィングス?」 は、
明らかに彼らの新機軸となる曲だろう。

ツェッペリン『III』のように、トラッドやフォークを消化しながらも、
オリジナリティ溢れる楽曲に仕上げるセンスは、キレにキレている。

いずれも、アコギとパーカッシヴなリズム、
それにクリスの控えめなボーカルで、基礎を作りながら、
前者は、(やっぱり!)ソウルフルな終盤への展開をみせ、
後者は、狂気をにじませたサイケデリック・パートへなだれ込むという、
凝ったアレンジ。

"人生は素晴らしい"と歌う、直接的な歌詞が感動的な、
T-11「ベター・ホエン・ユア・ノット・アローン」は、
キャッチーなメロを持った、このアルバムの良心的存在だ。

また、T-12「イーヴル・アイ」は、逆回転などSEにも凝った、
いかにもサイケデリックな曲調で、
酔ってしまいそうなアルペジオも、まさにといった感じ。

■新たな旅

これまで隙のないアルバムを作ってきた彼らだが、
今回はアルバムとしての完成度よりも、
新たな可能性の模索に、より重点が置かれているように感じられる。
そう言う意味では、試行錯誤に充ちた、実験的なアルバムといえるだろう。

基本はバンド・サウンドという点で、ぶれていないのはさすがであるが、
コーラスの多様性、アコースティックの存在感、サイケデリック・テイスト、
凝ったアレンジ、スタジオワークによる緻密な音作りなど、
これまでの彼らにはない新たな側面が、確実に刻み込まれていることは確かだ。

そう、彼らは確実に前へ進んでいるのだ。

ときに行き止まりにぶつかったり、方向を見失うことがあっても、
決して立ち止まらず、常に新しい場所を求め、次なる道を模索する。
その姿勢に胸を打たれる。

これまでは、同じ地点を掘り下げてきた彼らが、
そろそろ違う海域へとさまよい出したというのが、このアルバムの印象だ。

その先には、さらなる未知の世界が待っている。
そんな新たな可能性を感じさせてくれるアルバムだ。


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