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「インランド・エンパイア」(2006) [映画の観方]

<原題> Inland Empire
<監督> デヴィッド・リンチ
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新作が公開されれば、無条件で観に行きたいと思う唯一の映画監督が デヴィッド・リンチだ。リンチの作品では「イレイザーヘッド」が好きで、これは僕のフェイバリット映画ベスト5に入る。

しかし「ツインピークス」だけはまだ観ていない。人にそのことを話すと、ちょっと怪訝そうな顔をされる。リンチファンのくせに「ツインピークス」を観ていないなんて、という顔だ。確かにそう言われると何も言えないが、リンチといえば代表作は「ツインピークス」というイメージが根強いんだなあと思わせられた。

決して敬遠している訳ではないのだが、「ツインピークス」はまあテレビドラマだし(映画版もあるが)…というような言い訳をしつつここまで来てしまった。自分でも観なきゃなあ、というかぜひ観たいとは思うんだけど、いかんせん全部観るのに時間がかかるので、なかなか踏み込めないでいる。

だいたい自分はすべてを網羅する、ということがどうも苦手である。コミックも全巻揃えたことがない。あと1冊で全巻というとこまでいったことはあるのだが、結局揃えることなく終わってしまった(いやまだチャンスはあるか)。そのときはすでに人に借りて読んでしまったというのもあるが、いつでも揃える気になれば揃えられるというのもあって、そのまま来てしまった。

人に言わせればそういう歯抜けの状態は気持ち悪いそうなのだが、僕はあまり気にしない。CDなんかでも、ある程度作品数のあるアーチストで、全部揃ってるなんて、ビートルズツェッペリンくらいしかないんじゃないか。それも揃うまでかなりの時間を要している。だから好きなアーチストのものは何でもかんでも全部持っていなくては気が済まない、という人の気が僕にはちょっと分からない。

と話は逸れたが、何はともあれデヴィッド・リンチである。待ちに待った新作「インランド・エンパイア」がついに公開となった。だいたい僕は映画を観るときには過度な期待はしないようにしている。その方が見終わったあと得られる満足度が高いからである。どうせなら満足感を味わいたいので、何も無理にハードルを上げることはあるまい。特に世間の評価が高かったり、周りに薦められたときは用心するようにしている。

しかしこの作品だけは期待せずにはいられない。よく劇場サイズの90分にするために編集でカットするなんてことがあるが、それは監督の意向とは相反するものだったりする。この「インランド・エンパイア」は3時間という長尺であることから、そうした制約から解き放たれ、監督のやりたいように出来たんじゃないか、と推察できる。

また監督デビュー30周年となる節目の作品であり、ローラ・ダーンを再び起用したことやジャスティン・セロウローラ・ヘリングナオミ・ワッツ(声のみ)といった「マルホランド・ドライブ」組の参加などから、何となくこの作品にかけるリンチの思いが伺える気もするし、それに漏れ聞こえてくる話などからも、これはデヴィッド・リンチの集大成であり、最高傑作となるのではないかという予感もあって、期待するなという方が無理な話である。

デヴィッド・リンチの知名度からすれば、上映規模の小ささが気になるが、それだけ一般受けは難しい作品ということだろう(その判断は正しかった…)。そのことも逆に期待を抱かせた。こうして不覚にもハードルを上げまくってしまった。

さて、実際観た感想だが…はっきり言ってよく分からないというのが率直なところだ。内容が分からないのは、まあいつものことなのでいいのだが、どう言ってよいのか分からないのだ。

実は映画の半分、いや3分の2ぐらいまではどちらかと言えば落胆の気持ちが大きかった。どうひいき目に見てもこれは絶賛は出来ないなと。それどころか、いかにリンチと言えど、このままではただじゃ帰さんぞ(いや帰らんぞ)という気でいた。こんなものを3時間も見せ続けられるのかと。

リンチワールドといえばリンチワールドで、初めの数分を見ればこれがリンチの映画だとすぐ分かる。集大成といえば聞こえはいいけど、悪くいえば単なる焼き直しに過ぎないのではないか。何かが起こるんじゃないかという期待が常にあるから退屈することはないが、ほとんどまるで刺激がないまま進むのでちょっとつらい。

映像だって特に美しいとは思えないし、印象的なシーンも余りない。執拗なまでの顔のアップも気になった。それが綺麗な女の子だったりするとまだ救いようがあるのだが、今のローラ・ダーンを綺麗な女の子と呼ぶのはいささか無理がある。彼女はけっこう好きな女優なのだが、この作品の彼女には正直余り感情移入できなかった。アップになるたび、老けたなあ、という思いが先にきてしまうのだ。なかなか凄みのある演技を見せてくれていただけに残念ではある。

ストーリーはますます難解さを増している。飲み込みの悪い僕にはちょっとついて行けない。ただ明確なストーリーや明確な結末がなくても、いい映画というのはたくさんあるし、むしろそう言う映画の方が好きだったりする。大体リンチ映画もそういう傾向が強いわけだし。だから難解だというのは直接的な減点対象にはならないが、それにしても、である。

それでも後半は少し巻き返しを見せたという印象がある。しかしあくまで、前半の借りを返したというだけで、トータルでは貸し借りなしのゼロだ。何しろよく分かっていないのだから、内容についてあれこれ言えないが、満足度という意味では100点満点で60点、まあ平均点かなというところだ、今のところは。

「マルホランド・ドライブ」を観たあとは、すぐさまもう一度観たい!と思ったものだが、この作品をもう一度観たいかと言われれば、特にすぐには観なくても、まして劇場で観なくてもという感じでしょうか。ただこのまま訳の分からないままでは悔しいので、ネットなどで情報を収集しつつ、レンタルされたら見直してみたいという感じだ。


たまたま昨日井筒監督がテレビでこの映画を語っていた。やはりよく分からないと言っていた。「人に分からない映画を作るな」と怒っていた。

井筒監督の言うことは確かに一理ある。だが分かりやすいものばかり作ろうとするから映画がつまらなくなるという側面もあると思う。その結果皮肉にも、井筒監督自身が番組冒頭で言っていたように「ハリウッドの映画は子供向けばっかりだ」ということにつながるのである。誰にでも分かるような映画というのは、突き詰めれば子供にも分かるということになるからだ。

ただそれが悪いとも思わない。誰にでも分かってなおかつ優れた映画というのも多く存在する(映画の総量からするとごくわずかではあるとしても)からだ。しかし一方でデヴィッド・リンチのようなやりたいことをやる、自己の欲求に忠実な監督がもっといてもいいと思う。リンチの場合は極端としても、もっと野心のある、あるいは骨のある作品がヒットしてもいいのにと思う。要はバランスの問題で、そういう意味では今の映画界は不健全な状態にあるという気がしてならない。

僕は井筒監督の作るようなエンターテイメント指向の強い作品も嫌いではない。むしろ「パッチギ!」はけっこう好きだ(ベタだけど、泣ける)。ただデヴィッド・リンチの作品とは分野が違うというだけだ。そうした多様性こそが映画のいいところだと思うのだが。

「人に分からない映画を作るな」というのはおそらく大方の意見だろうが、それはピカソに「デタラメな絵を描くな」と言ってるようなものではないか。

確かに彼の作品はマスターベーション的性格が強いかも知れないが、マスターベーションだって技巧を凝らし、ショーアップし、魂を注入すれば、優れたエンターテイメントや芸術になりうるのだ。芸術って本来そういうもんではないだろうか。ただ今回はそこまでの(人を激しく感動させるだけの)レベルに達しなかった(あくまで僕の印象ですが)というだけだ。

「インランド・エンパイア」オフィシャル・サイト  http://www.inlandempire.jp/index_yin.html

★Today's Set
1.Black Tambourine(Beck)
2.The Locomotion(Little Eva)


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